文芸社『A』 Vol 6 [1999]
    
つらいこともある。やりきれない気分になることもある。
      でも生きろ。あなたが生きれば世界は変わる。
      あなたを飲み込もうとする虚無に屈服するな。
      明るいほうへ、暖かいほうへ、美しいほうへ、ひたすら進め。
      あなたを導く声を、光を、おとしめてはならない。
      神をイメージできない者に、アインシュタインは微笑まない。
      あなたが頼りにしている最新ギアが、脱着可能なリアリティなのか、脱着可能な虚無なのか、見極めろ。
    いつか、どこかで、誰かがそれをやることを夢想するな。今、ここで、あなたが、やるのだ。
でも何を?
戦争をやめるのだ。
      憎しみを癒すのだ。
      許せ、愛せよ。
    そして、歩け。
コヨーテの声がきこえる。
      シリウスに反射して、あなたの鼓膜へ。
      ぶるぶると震えている。怖いのか? 寒いのか?
    ここは東京なのか、インカなのか、あの世なのか。
光だ。それを視た者は沢山いる。
      沈黙せよ。光はあなたの瞳から溢れ出ている。
      あなたの行いがあなたの証しだ。
    それだけだ。簡単だろう?
クリスチャン・ローゼンクロイツについて話そうか。
      彼には秘密がある。アタッシェケースに仕込んだ小型核爆弾のように。
      彼は最初の情報迷彩技師の一人だ。そこから始まった。
      反情報だ。世界の背中に飛び込む術だ。
      彼はたった一人で、ペルシアの砂漠、☆の下の天幕で大秘密を記述し、自分の背中に飛び込んだ。
      だけどそれだけじゃ充分ではない
    光だ。もっと光だ。
ブルーアシッドを知っているか。
      何人かがペルーでそれを試して、本当の意味で吹っ飛んだ。
      彼らは今、チベットの地下寺院に回線を引き込み、「爆発的な背中の屋根」というホームページ制作会社を営んでいる。
      そして日本のMTGについてのページを制作中だ。
    最高にクールでスペースアウトなTAZだ。
ところで私は過去に、もの凄く壮大な待ち合わせをしたことがある。
      上野の科学博物館だ。エデンのすぐ傍だ。
      GとLをがっつりキメて、私は待ち合わせの場所に向かった。
      しとしとと小雨が降っていたが、私はその風景をすぐに憶いだした。
    博物館の中では、奴が白い猿を連れて待っている筈だ。
奴はいなかった。彼女は泣き出してしまった。
      白と黒の恐竜が互いの尻尾を追いかけて回転していた。そう、これが目印だ。
      遠くなる意識を辛うじてたぐり寄せ、階段を昇った。
      そこには石から猿を経てヒトへと至る、眠たい記憶がパノラマ展示されていた。
      マンモス。骨。石器。ガビーン。ごめんなさい。そうでしたねぇ。
      さらに上のフロアには、遠い昔に飛来した隕石が展示されているという。
      私は隕石フロアを回覧するのを断念した。もうイッパイイッパイだったのだ。
      逃げるように階段を降り出口に向かうと、トドメとばかりに巨大なフーコーの振り子が待ち受けていた。
      ゆっくりゆっくりゆっくりゆっくり……揺れやがってこの野郎!
      おまえが「知」か。そしておまえは……
      噓。もう何も言うまい。
    最高だよ。yamatonchu.comだよ。
果たして、白い猿と老紳士は居なかったのだが、やっぱり居た。
      奴がクリスチャン・ローゼンクロイツなのだろうか?或は……
      幼少の私とフラダンサーの夢に現れ、一方的に待ち合わせ場所を指定した奴。
    奴のアタッシェケースには地球60億個分のブルーアシッドが詰まっているに違いない。
    でもなんで?
マジかよ………
という訳で最終回なんですけども、いかがでしたか?
      モテモテ? そう。よかった。
    
やっぱりさ、たった一人にモテたいよね。んじゃ!